カマキリムシ2創作レポート

第一回(2002.5.7)

というわけで、創作レポート第1回だ。
よーし、はりきって折り紙折っちゃうぞ。
ともかく何折るか決めようと考えたところ、
「カマキリ」の簡明に折れるバージョンが
折りたい気分なので、それを折ることにした。
当然のことだが、現段階では納得のいくもの
が完成するかどうか保証はない。ここを定期的に
読んでいるような人は数限られるだろうけど、
作品が完成しなくても当方一切責任もちません。
見切り発車でございます。

さて、前作のカマキリは、

「鎌のトゲと触角を表現する」

という条件を実現するため、お世辞にも簡明
とは言い難い出来だったので、今回は、
「触角」だけは表現する方針でいくことにする。
前作で一番気にいってる部分が触角なので、
ここは是非生かしたいところなのだ。
前作の創作前にもここで書いたことだけど、
カマキリは、普通に考えれば腹割れで折るべき
昆虫だろうと思う。しかし、頭部のカドは
正面にもってこなくてはならない。
そこで、今回は、前川氏の悪魔の尻尾を後ろに
まわすような技法で折ろうと考えた。
ということは、紙のカドを頭部に使うことに
なる。(前作は辺からの折り出しのため、
紙の裏が表にでてしまう構造だった)
そこで、その線でまず配置を考えてみる。

とりあえずこうかいてみる。これの洗練は
簡単だ。しかし、実際折ってみたら、
重要なことを忘れていたことに気づいた。
それは、カドを反対側にまわすためには、
鶴の基本形のように、中央に使われない
カドが一つ必要だったのだ。なので、
次に鶴の基本形の上半分から折れないか
考えてみる。

図をかくとこういうことだが、ようはカドが
上手く割れの面にまわりこますことができて、
造形がうまくいけばいいので、鶴の部分だけ
で試し折りを試みる。それで、半時間ほど
鶴をいじって、以下のようなものを折った。

前作に良く似ているけれど、折り方はかなり違う。
(鶴から折ってる時点で違うし)
簡明に折れるのでまあまあいい出来と思う。

今回ここまで。


第二回(2002.5.13)

イッひー!!週末だぜー!家にコモって
オリガミオリオリするぜー!!

ちうわけで、第二回である。
前回にツルの基本形からカマキリの頭部を
折った。とりあえずこれを、用紙の
カドに埋め込んで折ってみる。

(上のちょこんとついてるのがドタマ。
デンドロビウムを意識した造形でクール
にまとめてみた。)



(展開図はこんな感じ)
あたりまえだけど、ちゃんと割れが前面に
確保されている。

次にここから、鎌や脚などのカド連結を
かんがえるために、基本枝構造を確認する。(以下)

図鑑を見ればわかることなので、
私は普段こういう図をかくことはない。
説明の便宜を考えてのことである。

図をみると、カマキリでは、頭と鎌の間と、
鎌と中脚後ろ足の間のそれぞれに、2箇所の
帯領域を作らなければいけないことがわかる。
簡明に折れてしかも帯領域が2箇所というのは、
結構難題だ。しかも、触角と鎌と脚を合わせた
カド数は”8”である。カド数8つというのは、
クモの例でも分かる通り、とても正方形に
収めにくいカド数なのである。

ともかく、頭の下は帯領域を挟んで鎌のカドで
ある。これを円図にあらわしてみると、
以下の通り。

鎌の円領域を内部に押しやるパターンは
今は考えない。理由は、背に余計なカドを
出さずに折ることを考えると、
次は帯領域をはさんですぐに腹のカドを
中央に配置する必要があるので、これが
もっとも効率が良いからである。
また、単純に内部カドは折りにくいという
こともある。現時点では下方は開放されていて
どう折ってもよいので、これを洗練するのも、
それほどむずかしくない。折り方はいろいろ
考えられるだろう。

それで、適当に折ってみたのが以下。






(沈め折りは22.5度の4分の1。
今回は、平行沈め折りは使わない方針でいく。)





比率は適当。中央部に若干の省略がある。
正確に折るのは重要であるけど、
私の場合はこの時点で比率決めても、そのまま
最後までその形いける保証がないので、
製作の途中段階で比率は決定しないことが多い。
この場合だと、赤で示した部分の黄緑の線の分の
幅が確保されていることが、帯領域の発生に
対応するので、そっちに留意するほうが重要だ。

考えた中では、以下のパターンも有望だ。

赤線が谷線になるので、他の分子との
連結がしやすいかもしれないし、一値性が
強いので、沈め折りもしやすそうだ。
いくつか折ってみたなかで、これらは尻(腹)に
あたるカドもちょうどよく折れそうなので、
暫定で採用ということにする。

今回はここまで。


第三回(2002.5.19)

カマキリムシ2創作レポート第三回(完結編)である。
前回までで、上半身の試作を行った。
今回はそれに下半身をつけることを考える。
下半身をつけると言っても、紙の端から順に
折っていくような方法はとらない。
前回折ったものをもう一度円配置の図まで
もどしてから残りのカドの配置を考えるように
する。そのため、まず、前回折った上半身の
円配置を確認する。(以下)


触角と鎌の円の大きさに差がある。
実際は頭にあたるカドを折るため、
触角はこの長さよりもう少し短くなるが、
便宜的に省略している。

鎌のカドより触角のカドが短くなっている理由は、
以下のように考えると理解しやすいかもしれない。


まず帯領域のない形を考える。
第二次三角形を敷き詰めるのが最大効率である。



次に、触角のカドの中心を上にせり上げる。
つまり、もとの分子の境界を赤線までずらす。
すると、触角のカドとして折れる最大の大きさが
小さくなる



結果、触角と鎌の間に帯領域が生じる。
このとき、もとの鎌のカドの大きさも少し変化する。

さて、この図を踏まえて、後半身の配置を考える。
基本枝構造を確認すると、鎌のあとは、帯領域を
はさんで中脚、後脚、腹がすべて接した形に
なっている。



”2”の帯領域をはさんで、
あとは全部同じ根元から出る


仮に鎌と他の脚のカドが同じ長さ
であるとして、脚を用紙の辺に配置するなら、
以下のような形が考えつきやすいだろう。


触角のカドが小さいので、
この配置が実現できる。

図のように、鎌と中脚の円の中心を結んだ線が
垂直になるようにすれば、洗練もしやすいだろう
と考えたわけである。
この時点で、内部領域が若干余るので、
図の青い小円の位置にカドを折る必要がある
だろうということがわかる。
だいたいこのくらいまで考えたら、私は大抵の
場合、次は実際に紙を手にとって、円だけを
書き込み、そのまま実際に折り始める。
折線の決定や洗練化はとりあえずおいといて、
折り出されるカドの大きさと折り出し位置さえ
正確であれば、どんな(卑怯な?)折り方を
してもよいという条件で、とにかく一旦
畳んでしまうのである。

このような乱暴なやりかたをする利点は、
まず実際に折ってみて全体のバランスを確認
できることが一つ。それと、適当に折ると、
その配置を折るためには、だいたいどんな感じの
折り線をつければよいかが手っ取りばやく
確認できることがもう一つである。
もちろん、うまくいかない場合もたまにあるので、
その場合は加円法などを併用する。それで、
そのように乱暴に折った結果が以下である。





一応、基本枝構造通りのカド分岐である。
カマキリといってカマキリといえないこともない。
しかし、なんだかイメージしてたのと
ずいぶん違う。というか、かなりヘボい。
いったい何がいけないのだろうか。

図鑑とみくらべて検討してみると、いくつか
の改善すべき点がわかった。一つには、
中脚、後脚の長さと腹の長さの比率があまりに
違うということ。実物では、腹の長さの1.5倍
は脚の方が長い。しかし、折ったものは逆に
脚のほうが短くなっている。もう一つには、
腹のカドのボリューム不足。前作では腹と
羽根を分けて折ったが、やはりそうしたほうが
かっこよくなりそうだ。そこで、それらの点を
踏まえて以下の配置を考えた。


後半身のボリュームをアップしてある。
やはりこれも、まずは乱暴な折り方でいきなり
たたんでみる。その結果、今度の配置は
まあまあバランスがよいことがわかった。
そこで、この配置で洗練を行った結果、
以下の展開図に到った。



さらに、これをたたむと以下のようになる。





真横からみると、基本枝構造通りの分岐が
得られたことが分かる。
これならかっこいいカマキリが折れそうだ。

と、本来なら、ここで、

「次回に続く」

とかなんとかやるのが常套かもしれない。しかし、
そんなもったいぶるほどのものではないので
このまま最後までいくことにする。
何度か試作を折るうち、だいたい以下の形
が出来上がった。











左が24cm右が35cmで、
それぞれ銀の折り紙の裏紙使用。


経験上、24cmの銀紙で折れれば、普段
使ってるラッピングペーパーでも楽に折れる。
あとは、細かい部分の折り方を検討して、
本番用の紙で丁寧に折れば完成である。
にらみ折りをされる方がいるかも
しれないので、ヒントめいたことをかいて
このコーナーの完結とする。

○折り方に関する補足

まず、以下の展開図を畳む。


特に上にあげた基本形の展開図とことなるところを
赤で示す。


そののち、後ろ脚の長さを確保するように、
後半身部分を前方にスライドさせたのち、
腹の先部分を開いてつぶすように折ると、
自動的に基本形が完成する。
このように、基本形の一部がスライドする
機構を専門用語で、ヴァリアブルトランス
ミュートシャーシ(通称V−Tシャーシ) という。
実際に完成形までもっていくときは、
まずこの前段階の形にして、前半身部分の
沈め折りや谷折りを実行したのち、後半身部分を
スライドさせて、さらに変形を進めるとよい。
このとき、カドの分岐に直接かかわる部分は、
単純に沈め折りするしかないけれど、それ以外
の部分は、例えば一回沈めてからまとめて谷折り
などにする必要がある。すべての分子を沈めて
いたら、側面部分の襞が多すぎる形になって
しまうからである。それと、鎌のカドに
かかわる分子は、沈め折りの方向を他と少し
変える必要があるので注意されたい。

(カマキリムシ2創作レポート完)


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